知ってよかった!住まいの知識

住まいに関する表彰作品のご紹介第31回すまいる愛知住宅賞
主催:愛知ゆとりある住まい推進協議会・中部経済新聞社

ゆとりある住まいづくりを推進するため、愛知県内で竣工した住宅で、人や地域にゆとりと安らぎを与える工夫がなされた住宅を表彰しています。(敬称略)

講評:審査委員長 塚本 由晴

 現地審査で訪れた作品に共通して感じられたのが、暮らしを取り巻く事物への繊細な眼差しで、nLDKのような目的が決められた室の組み合わせに支配されず、個別の案件において創造的に暮らしをサポートしている。個別的かつ創造的なのだから、受賞作品のラインナップは当然多彩になる。一際驚いたのは「大地の家」。戸建住宅が無意識に想定する「家が先、庭が後」の図式を、作り方からひっくり返している。地元岡崎産の御影石の庭を先に作り、石の上に柱をたて、木が突き抜ける穴あきの屋根を被せ、ガラスをはめることによって、庭全体に暮らすことができるようになっている。つくりも丁寧で、庭に住む体験にふさわしい素材の組み合わせが見事。両親と住む自邸だから実現できたとはいえ、この最初の一歩は重要で、二歩目、三歩目を一緒に歩みたい人がきっと現れるはず。「20年住宅」は家に必要なものが全て、少し譲り合いながら揃っていて、「欲」がない美しさがある。町屋ではないが、異なるプロポーションや規模に適応させても、崩れない型としての完成度がある。「上原の家」は遠くの山並みを望む、日当たりのいい緩やかな斜面を耕す営為の中に育まれた、複数の感覚の統合(共通感覚)が作らせたと思わせる住宅。特に風がその中心にあって五感をつなぐ。その場に身を委ねやすく、色んな感覚が開かれる快楽がある。「幸田町の住宅」は1間モジュールを経済的観点から再発見しつつ、その厳格な適用によって逆に暮らしの柔軟性を引き出す。「蒲郡の家」は斜面地の住宅地開発につきものの、不自然な擁壁を壊して小さな段に分け、そこにバサッと屋根をかける。衝動に突き動かされたようなつくりは、規格化されない暮らしへの期待の現れ。「大池薬局ビル」の中央部の三角吹き抜けは、機械的に処理されがちな垂直動線を、光、風、人のふるまいが相互に影響しあう居場所へと変換、入り口部分のカフェと自然につながる。以上が住宅賞で、二点が佳作となった。「カドニワの家」はその立体的な空間構成の起点となるはずのカドニワが未完なのが惜しい。「山王の住宅」のラミナ一本一本の質にまで踏み込んで設計された撓んだ梁への挑戦には、勇気と創造性を認めざるを得ない。間違いなく問題作だが、住宅として十全に使われていない違和感が審査委員会に残り佳作となった。

 審査を終えて、古谷先生が10年にわたって続けられた審査委員長の立場を引き継ぐことの責任の重さを感じている。現地審査で訪れた住宅作品の質の高さを見れば、40代を中心とする設計者層が、愛知では分厚く形成されていることがわかる。しかも、この賞に繰り返し応募されている方が多いとのこと。古谷先生の存在が、この賞を地元の、特に若い設計者が切磋琢磨する場へと育てたと言えるのではないだろうか。こうした役割を担ってきたのは紙媒体の建築ジャーナルだが、インターネットの出現以降苦戦を強いられている。地域に特化した住宅賞が以前にも増して重要な役割を担う時代なのである。

愛知県知事賞大地の家

設計者/西口賢建築設計事務所
西口 賢

大地の家 1 大地の家 2

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名古屋市長賞20年住宅

設計者/諸江一紀建築設計事務所
諸江 一紀

20年住宅 1 20年住宅 2

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住宅金融支援機構 東海支店長賞上原の家

設計者/佐々木勝敏建築設計事務所
佐々木 勝敏

上原の家 1 上原の家 2

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UR都市機構 中部支社長賞幸田町の住宅

設計者/北村直也建築設計事務所
北村 直也

幸田町の住宅 1 幸田町の住宅 2

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愛知県住宅供給公社 理事長賞蒲郡の住宅

設計者/スタジオハルガ
鈴木 貴之

蒲郡の住宅 1 蒲郡の住宅 2

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名古屋市住宅供給公社 理事長賞大池薬局ビル

設計者/裕建築計画
浅井 裕雄

大池薬局ビル 1 大池薬局ビル 2

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佳作 愛知県森林協会長賞山王の住宅

設計者/studio velocity 一級建築士事務
栗原健太郎/岩月 美穂

山王の住宅 1 山王の住宅 2

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佳作カドニワの家

設計者/植村康平建築設計事務所
植村 康平

カドニワの家 1 カドニワの家 2

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