各種イベント・コンクール

すまいる愛知住宅賞 (第31回)
愛知県知事賞
大地の家

「人、樹木、花、鳥、風、光」すべてが同朋

日本人は古来から「人と自然の間に境界は無い」という自然観と共に生きてきた。そして住まいにおいても「自然との合一」を求め、庭との関係性を築き、四季を楽しんできた。

しかし現代は狭い敷地の中で、駐車場の確保が庭の領域を浸食し、高気密高断熱への偏重による壁の多い住まいが庭との関係性を削ぎ、カーテンによるプライバシーの確保が更に拍車をかけ、「自然との合一」が断絶してしまっている。

そこで「自然との合一」を蘇らせる為、日本の建築空間が作り出してきた木造軸組による「透ける空間」に立ち返ることを試み、中庭を中心とした「透ける空間」に「外の間」~「半外の間」~「半中の間」~「中の間」を時計回りに配置した。
特に「半外の間」と「半中の間」は「曖昧な領域」を作り出し、「庭と建築を緩やかに繋ぐ」という重要な役割を担っている。

また「自然との境界が無い」かのように感じられるよう、生命感溢れる「荒々しい素材」の選定を心掛けた。
計画地の岡崎市は「石の日本三大産地」と言われ、良質な花崗岩(宇寿石)が採れたことから、石の街として発展してきた。採石場を視察した際、製材されず長年放置され続けてきた石に着目しこの山の風景をそのまま再現できないかと考えた。「半外の間」では、これらの石で大地の再生をし、力強くL型に組んだ。
次に自然石の上に柱を立てる「石場立て」を行なう為「光付け」を施した。据え付け高さは大黒柱を始め、全て異なっており、 「荒々しい素材」を「緻密に施工」することで「自然との合一」により近づけることを試みた。
屋根は「天然スレート葺き」、木部は「帯鋸仕上げ」、壁は「杉皮」等、自然に寄り添う素材で統一した。

開口部からは「優しい木漏れ日」と「柔らかな翳」が注ぎ込み、枝葉はしなやかに風を受ける。
樹木が花を咲かせ、水鉢に鳥が訪れた。
そして「大地の家」として「自然との合一」が蘇った。

応募時のパネルはこちら(PDFファイル)

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設計者:西口賢建築設計事務所/西口 賢

講評:審査委員 柳澤 講次

森=住宅が第一印象。玄関がどこにあるのか見当がつかない。森のファーサードを通り抜け、玄関を開けると、そこも森の中。内壁は樹木皮、柱は自然木、長椅子は地元産の石、徹底して森の中。果たしてこの中で生活できるのかと思えてくる。そこに老夫婦がいた、設計者のご両親である。長年住んできた家を手放し、ここへ移ってきた。最初は何が建つのかわからず不安であった。しかし住んでみると、びっくりするぐらい住み心地がいい。この年になって新しい人生をまた一つ貰ったと、満足そうに答えてくれた。住人と森との一体感が強く感じられた住宅である。

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