各種イベント・コンクール

すまいる愛知住宅賞 (第30回)
愛知県知事賞
上郷の家

母屋と暮らす構え

敷地内に各世帯の家、離れ、倉庫の複数を含んだ構成が多く存在する地域に、建主のご実家(父と祖母の二人暮らし)がある。この敷地内に夫婦+子供2人の住宅を建てる計画。

母屋、離れ、垣根、農機具庫で囲まれた静穏な中庭と母屋・離れの間を通り抜ける心地よい風を受けて、この状況を肯定した関係性を築くこととした。そのため、南西側隣地に立つスレート波板の工場を自然に隠すことで、母屋と離れと中庭との関係を親密にしていた農機具庫の場所に矩形の細長いボリュームを置いて、母屋を含めた周辺に建つ住宅、母屋と中庭との関係、プロポーションを考慮して7寸勾配の切妻屋根とした。

東海地方では、実家の敷地内に若夫婦の家を建てるケースが多く存在する。魅力的な事柄だけれど、多くの場合、母屋との関係性は希薄で生産性に特化した住宅が、隣家との関係と変わらない建ち方をしている。意識的に関係性を断ち切るような建ち方も見受けられる。これらを否定して、生活の全てが母屋と共にあるような建ち方にも、息苦しさを感じてしまう。そのため、矩形の長辺方向(母屋面)に対して細かく分割したボリュームを、一筆書きの様に下から上へと流動的に床・天井の高さを変化させた隣接型として、中庭と母屋との関係性が各々に築けるようにした。それは、中庭という吹き抜け空間を有した室を通して、各々に母屋との関係を作るような感覚に近いのかもしれない。

また、床・壁・天井・開口部のプロポーション、素材、ディテール等の空間要素を各所で使い分けたり、混合することで、空間や空間領域に個性を持たせながら柔軟性や両義性のある場となることを目指した。

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設計者:吉田夏雄建築設計事務所/吉田 夏雄

講評:審査委員 谷村 留都

実家の敷地に若夫婦の住まいを建てるに当たり、現存する建物に付加することで中庭を始めそれぞれの関係性が快適になった。風景に合う切妻屋根、窓の取り方、自然素材による構成、配慮されたアプローチ空間などが新旧の対比ではなく、共生性を生み出している。内部は敷地の勾配を生かしたスキップフロアーの構成で住宅の各機能をゆるやかに仕切りながら繋いでいる。特に階段周りの複雑さが程よい接続詞となって豊かな空間に貢献している。

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