各種イベント・コンクール

すまいる愛知住宅賞 (第37回)
UR都市機構 中部支社長賞
街区の中の家

奥行きの深い旗竿地に建つ、家族3人の住居と両親のための書斎を備えた住宅の計画。前面道路側から3軒目にあたる旗竿地で、かつては手前2軒と同様に、北側に寄せた2階建ての住宅が建っていた。街区の中央に位置することから、周りの住宅やアパートによる囲われと、駐車場の空地により、程よい親密感と抜けのある場所であった。

両親の書斎は、近隣にある自宅から通う離れ的な仕事部屋であり、友人を呼んでお茶をする客間であり、自宅に収まりきらない本を収納する書庫でもある。また将来、書斎としての役目を終えた後には、子世帯の仕事部屋や子供部屋、楽器室など用途を変えていくことが想定される。限られた敷地の中で子世帯の生活空間と両親の書斎を階で分ける断面的にゾーニングでは、世帯間のコミュニケーションが取りづらく、将来の生活の変化にも対応しにくい。そこで選択的にアクセスできる平面的なゾーニングが良いと考えた。玄関から2方向に分岐した空間は、それぞれの居場所を経て対角側で合流し、円環状の体験となる。対角に共用空間を配置することでそれぞれの領域が滲み合う。結果的にできた中庭越しに建物全体の様子が窺い知れ、中庭が建物全体に自然光を配る。

また円環状の空間は屋根の高さを変化させることで画一的な部屋の連続ではなく、洞窟のように気積を変化させながら連なり、場所の特性を増幅する。同時に、中庭越しに見える屋根並みが、建物に囲まれた街区の中のような、山並みに囲まれた盆地のような自然な親密感と抜けを作る。敷地の竿部分の、路地を進むような長さのある体験をそのまま旗部分に平面計画として巻き込み、敷地の周辺環境と呼応するように断面形状を決定していく。その屋根並みが連続するように前面道路へ向かって伸び、まちへと接続していく。

元々敷地にあった空間性が結晶化したような造形が、まちの空地に断片的に現れ、街区の中央に埋もれながらも、洞窟的な気積の変化と開放性を備えた暮らしをつくる。

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設計者:岸秀和建築設計事務所/岸 秀和

講評:審査委員 川本 直義

奥行きの深い旗竿地という難しい敷地条件に対し、中庭を囲む円環状の部屋配置によって、明るく豊かな住空間を実現している。中庭越しに住まい全体の気配が伝わり、家族の一体感を育む構成が魅力的である。屋根の高さを細やかに変えることで、各室の天井高を変化させ多様な空間を生み出しており、中庭の眺めも場所ごとに変化する。家族構成の変化に応じて柔軟に使える間仕切りの工夫もあり、一家が長く楽しく暮らせそうな、好感の持てる住宅である。

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