すまいる愛知住宅賞(第37回)
佳作
魚町の店舗と住居
まちの自転車屋さん
中心市街地の商店街に面する昔ながらの自転車店と住居の建て替え。この場所はかつてアーケードの架かる商店街だったが、平成の終わり頃に覆いは撤去された。建主は自転車店を営む60代の夫婦。店主が生まれる前からの家業の自転車屋を継ぎ、夫婦二人三脚で営んできた。私が高校へ通った自転車は、20年以上前にこの店で購入した。建て替え前の建物は数回の増築を重ね、店舗部分と住居部分が入り組んだ複雑な間取りになっており、老朽化もしていた。子供たちも地元を離れておのおのの家庭をもち、夫婦と犬1匹で住むには広すぎるため、建て替えることとなった。
防火地域における木造店舗/住居
与えられた条件はひとつずつ。店主である夫からはとにかく店舗スペースを大きくとること、妻からは店舗を通らずに住居スペースへ行けること。敷地は防火地域であるため、床面積が100㎡を超えると耐火構造とする必要があり、鉄骨造か鉄筋コンクリート造となるとコストが厳しい。夫婦の年齢と後継ぎがいないことも考慮し、住居と店舗を合わせてちょうど100㎡の切妻の木造平屋のプランを提案したが、100㎡では置ける自転車の量も限られ、住居部分も最小限になる。しかし、屋根のかたちは気に入ってもらえた。最終的に店舗棟と循居棟の分棟形式とし、それぞれ100㎡以下の木造準耐火構造を選択した。
木の屋根に包まれた大きな気積を街に繋げる
周囲が建て込んだ南北に細長い敷地で、元の建物は薄暗い印象があったため、ここでは自然光を取り込むために北側道路に対して大きな開口を取った。三角屋根の妻壁もガラスとし、敷地の奥へと連続する単純な切妻の架構の連続が通りからも見えるようにした。さらなる明るさの獲得と通気を期待し、棟部は長いトップライトとしている。これらを実現するために、店舗棟は外壁耐火型のロ-1準耐火構造とした。そのため基礎立ち上がりを木造の軸組みを柱の側面から支持したり、登り梁と外壁内の桁の間に耐火被覆材を挟み、グルードインロッドで接合するなど、特殊な納まりとした。店舗の奥にある住居棟はメンブレン型のイ準耐火構造とし、店舗棟とは対比的に扱った。木の屋根に包まれた大きな気積を街に繋ぎ、通りに直交する方向の奥行きを与えた。作業場を通りに近い位置に設け、通りを行く人と店主の関係性を誘発させることを考えた。


設計者:伊藤啓輔建築設計事務所/伊藤 啓輔