各種イベント・コンクール

すまいる愛知住宅賞 (第32回)
愛知県住宅供給公社 理事長賞
溶ける建築

まちの気配を生活空間につなぐ

縮小社会に突入して、暮らしは常にミニマムである。今は2 世帯で暮らすが、将来、大きな家は夫婦2 人では持て余す。土の可逆性と木造の可変性、そしてコンクリートの永続性を利用して、RC コアBOX を中心に、木造土壁フレームがそれを覆うことで、室へと開きながら家族が集まる。将来は土壁を溶かし、減築できる家です。

最初は2世帯で暮らし、将来はコンパクトに、ちょうどいい暮らしとは

この先は営みが不確かな時代であるに違いない、暮らし方はシンプルで小さくしていきたい、大きな家はいらないというのが要望であった。また、ここは海岸から近く1mほどの津波の影響があることを施主は知っていた。

可変的な木造フレームと永続的なコンクリートの箱

2世帯で暮らすには少なくとも40坪程度必要だが、夫婦2人であれば20坪程度で十分暮らせる。将来の減築を想定して、家の中心に約20坪のコンクリートの箱を配置した。その箱を覆うように木造のフレームを周辺に張り出すよう配置した。外力はコンクリートが負担することで、木軸は耐力壁が不要となる。コンクリートの箱は、家族の中心の場所でコアである。将来の夫婦2人で暮らす最小ユニットでもある。井桁状のコンクリート壁を少しずらすことで4つのスリットが生まれ、このスリットから室を通して、外へとつながる。みんなが中心に集まる時には、意識的に室を開くことで、コンクリートの箱でも閉ざされることなく、快適に過ごすことができる。

溶ける壁(土壁の減築システム)

コンクリートの箱の外側の木造フレームは、構造的制約が少ないため、将来どの部分も減築しやすい。例えば、外壁の焼杉の板を外しておくことで、大野町周辺の溶けている建築のように、雨風で土壁は溶けて落ちていく。そこには、大きな軒と竹小舞だけが残った半屋外空間が出来上がる。家の内と外の関係を可変できる仕組みは、住み手にとって、常にミニマムに暮らしていける喜びがある。将来また家族が増えるようであれば、そこに溶けた土を練り直し、壁として造ることで、内側の空間を手に入れることができる。

井桁に組まれたコンクリートの箱
―可変性と開放性を有する壁式鉄筋コンクリートコア-

本建築の構造計画を行うにあたり、計画上「津波にも耐えうる牢固なコンクリート造」と「可変性が高く、開放的な木造の要素」を要求された。これらの要求を満たす為、4枚の壁要素を井桁に配置した壁式鉄筋コンクリート構造のコアを中央に配置し、鉛直力のみを支える木造の架構をコアのスラブにアンカーする構造とした。 木造部分は水平力から解放される為、耐力壁が無い開放的でシームレスな空間を実現し、自由に増改築可能となっている。コアと木部材は、それぞれの通芯がずれていることから、コアのスラブの上に大母屋が載ることによって鉛直力を伝達し、水平力もスラブにアンカーすることによってスラブを介して耐力壁に応力を伝達している。象徴的な中央の柱は、屋根の頂点を支える高軸力の大黒柱で、これはスラブを介することなく基礎に直接応力を伝達させている。

応募時のパネルはこちら(PDFファイル)

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設計者:裕建築計画 /浅井 裕雄、吉田 澄代

講評:審査委員 柳澤 講次

「オーナー・地域・社会」の変化に対応する家。
日本では既存住宅の価値は土地に比べ低く、売買価格に上乗せするのが難しい。それに加え核家族化が進み、日本の住宅の寿命は短い。
「溶ける・固まる・又溶ける」のサイクルが実現できれば、ライフスタイルの充実と共に、CO2排出量を減らすことにも大きく貢献できる。今後オーナー・設計者一体となって造ったこの「溶ける家」の未来が非常に楽しみです。

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