各種イベント・コンクール

すまいる愛知住宅賞(第36回)
佳作
Dwelling in the Rhythm of the Terrain-地形のリズムに住まう-

現代において住宅建築に求められるのは、制度や合理性への単なる応答ではなく、住まう人の日常を豊かにし、地域との関係性を紡ぐ建築の在り方だと考えます。本計画では、起伏に富んだ地形を前提とし、その高低差を受け入れることで、敷地固有の風景と一体となる住宅を目指しました。

敷地は約4.9mの高低差をもち、周辺には第一種低層住宅専用地域が広がります。従来の擁壁を撤去し、土圧は建築躯体で受け、法面とセットバックにより街並みに調和する修景を行いました。建物は地形に馴染むよう分節され、街に対する圧迫感を抑え、穏やかに地域と接続する存在となるよう設計しています。

アプローチは坂道の延長として構成され、階段を登り、陰影のある玄関ホールを経て居間へ至るシークエンスの中で、自然光や風、緑の移ろいを感じることができます。開口部の先に広がる庭は、住まいの内外をつなぎ、四季を通じて日常の質を高めています。
空間構成は、基壇を積み上げるようにスパイラル状に展開し、それぞれの居場所が異なる性格を持ちながらも全体として一体感を持つよう設計しました。地下室は車庫としての機能に加え、店舗や老後の住居としての可変性も持ち、住まい手のライフスタイルの変化に対応します。

構造にはRC偏平ラーメン構造を採用し、中央の居間を構造的なコアと位置づけ、キャンチレバムーや大開口など柔軟な空間を可能としました。外断熱工法により、RC打放しの内壁が蓄熱体として機能し、快適な熱環境を実現。意匠・構造・設備を一体で考えることで、十環奈教の質と建築の合理性を両立させています。
建築が風景と接続し、暮らしのリズムと調和すること。それを本計画では「路」と「壇」という日本的スケール感に託し設計を行いました。地形を読み解き、場所に寄り添うことで、建築が新たな日常を創造する可能性を探る一つの試みとなれば幸いです。

応募時のパネルはこちら(PDFファイル)

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設計者:TSCアーキテクツ/田中 義彰

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