各種イベント・コンクール

すまいる愛知住宅賞(第36回)
佳作
梅ノ木の家

設計者自身とその家族のための家である。
敷地は、北側に地域の集会所があり以前から続くコミュニテイに隣接する一方、周辺は古い集落に少しずつ宅地開発や世代 交代の兆しが窺える場所であった。この地域における公共性 の分布や、変化しつつある新旧のコミュニテイの分布に対し、 生活空間を確保しながらまちの環境や風景をダイレクトに感 じられる場所、そして自立的でありながら変化を受容し、まちを観測する拠点のような場所が相応しいと考えた。

そこで、機能を納めた小部屋を敷地の縁に寄せて配置し、広く残した中央の空地を共有する生活空間とした。そこに、小さく分けた屋根を必要な場所にふわっと浮かせ、その内外に家具や植物が散らばり生活をつくる。それは箱に窓を穿つとは逆の、枝葉を集めて巣を作るようなプロセスである。小部 屋同士の隙間からは庭木が見え、その奥には通りや街並みが 見え、少し遠くに小山が見える。屋根の隙間からは隣家の屋根が見え、空が見える。手元にある物や家具などの近景から、街並みや空といった遠景まで無数の奥行きが様々な方向に広がり、響きあう。柔らかく守られながらどこまでも広がる家である。

幼少期を思い返すと、実家を座標の原点として東西南北を認識し、世界を知覚していた。住む場所を決めることは、世界の座標の原点を設定することであり、その生活は原点から世 界を眺める営みである。この家はある地域の片隅にありながらも、住人にとって原点であり、ここから世界がどこまでも広がっていると感じられる場所である。まちと繋がった生活空間は、まちの風景、周辺の人びとの活動、季節や空模様に影響を受け変わりゆく。それを受け入れ、まちと共鳴し、生きていく。

応募時のパネルはこちら(PDFファイル)

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設計者:岸秀和建築設計事務所/岸 秀和

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